据え膳食わぬは男の意地 2 - 据え膳食わぬは男の意地[完]    
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据え膳食わぬは男の意地 2



 どのくらい時間が経ったのか。


 俺は何度も瞬きして、目の前に座る女をまじまじと見た。


 今まで色んな“お願い”をされてきたが……こんな頼み事をされたのは、初めてだ。
 ……っていうか、マジであり得ねぇだろ。


 処女を貰えって……何だよ。冗談じゃねぇぞ。


 存分に驚いた後は、怒りがこみ上げてきた。人を馬鹿にするにも、程がある。



「………今のは聞かなかったことにしてやる」
 ぶっきらぼうに言って、席を立つ。急いでついてくる足音が聞こえたけど、振り返る余裕はねぇ。


「ま、待って……っ!」
 店を出たところで、ジャケットの裾を掴まれた。ちょうど、雨が降り出していた。
「お……お願いっ!話を聞いて‼」


「離せよ」


 自分でも、どうしてこんなに怒ってるのかわからなかった。
 いつもみたいに適当に流して……適当に笑って……それが出来ない。


「西門先輩!」


「誰のために、言ってんだ?」


「………え?」


「処女を捨てたいって……」
「誰のために言ってんだよ?」



 牧野の目が泳ぐ。
 その目は俺を見ない。


 苛立って、細い顎を掴んだ。


 本格的に降り出した雨が、髪や肌を濡らしていく。
 水を含んだ部分が、ずっしりと重くなる。



「やっぱり……駄目ですよね……」
「わかってます。あたしじゃ無理だって……」


「……おい」


「………ごめんなさい。変なこと言って……」


 逃げようとする彼女の腰をさらって俺は……気が付けば抱き締めていた。
 

 こんなのは不毛だってわかってるのに。
 俺の方を見ようともしないやつが……あきらの為に、こんなことまでするのが許せなくて。


「……途中で“止めろ”って言っても無駄だぞ」
「一度始めたら、絶対に止めねぇ。それでもいいって言うなら……教えてやるよ」


 俺は牧野の尻に手を遣り、優しく、だけど乱暴に押し付けた。
 そうして耳元で囁く。


「男と女がヤること」



 牧野が小さく頷いた時、俺はホッとしたのかイラっとしたのか……自分の気持ちを持て余して、半ばヤケクソ気味に細い手を取った。
 無言でメットを取り出し、放り投げる。


「行くぞ」


 バイクに跨ると、牧野はメットを被り後ろに乗った。おずおずと腕を回してきたから、その腕を掴んで俺の胴体に巻き付けた。背中が、ひどく熱い。


「落ちるから、ちゃんとしがみ付いとけ!」


 アクセルを吹かし、道路に出る。


 雨の勢いが強くなって、身体中に突き刺さった。牧野の手が震えてるのがわかって、俺は手っ取り早く、近くのビジネスホテルの駐車場に入った。





 空いてたのがツインルームだけだったが、別にどこでも構わないと思った。どうせやることは一緒だ……。


 中に入ると其処は笑えるほど質素な……ベッドが二つと椅子と棚と冷蔵庫くらいしかない……14㎡くらいの狭い部屋だった。見るからに壁も薄そうで……声も丸聞こえだろうと思ったが黙っていた。


「先にシャワー浴びろよ。風邪引くぞ」


 俺は濡れたジャケットを脱いだ。牧野はずっと……何も言わない。
 振り返ると、彼女は慌ててバスルームへ消えていった。




 暫くして、水音が聞こえ出す。



 何も違わない、いつもと同じシチュエーション、だ。



 女とホテルに来て、SEXして、帰る。
 ホテルのグレードは……大分低いけど。





 ーーーーー ドアが開く音がして、牧野が戻って来た。


 ごわついたバスローブから覗く、白くて細い手足。
 眩暈がしそうで……俺は慌てて視線を外した。


 ………これじゃあ、小学生じゃねぇか。



「俺もバス、使うわ」




 狭いバスルームに入ったら……あいつが使った後の、妙に生々しい気配が充満してて……ヤバいくらい興奮してきた。
 冷たい水を頭から浴びて、必死に冷静さを保つ。


 このままじゃ……間違いなく、あいつを傷つける。






 所構わず“サカる”なんて段階は高校の時に過ぎて、1000人切りなんて甘ったるいことを言っていた時期も過ぎて……今は惰性で女を抱いてるだけだ。


 挿入 れても擦っても、どっか冷めてて。
 次の日の茶会の正客のこととか、教室の運営の事とか考えてて。


 でも今日は……違う。





 俺の全身が叫んでる。





 ーーーーー 挿入 れてぇ。死ぬほど。




 こんな状態で抱いたらきっと……ぶっ壊しちまう。




 そう思ったから俺は……仕方なく自分のそれに手を伸ばした。
 1人でなんて殆どヤッたことねぇけど、仕方ない。









 取り敢えず1回ヌいて、俺はバスルームから出た。部屋の中はあまりにも静かで……一瞬、あいつが帰っちまったのかと思ったが……違った。


 牧野は2つあるうちの、窓際のベットの上で小さく蹲っていた。


 その姿を見た時……止めようと思った。下らない意地で彼女の処女を奪う権利なんて……俺には無い。





 近づくと、気配を感じたらしい牧野が、顔を上げた。


 止めようと思ったのに……大きくて黒い瞳が……潤んで光って……スゲェ綺麗だったから……つい手を伸ばした。


「キスしたこと、あるか」
 口を突いて出たのは、言おうとしていたことと真逆のことだった。


 牧野は可哀想なくらい顔を赤くして……ゆっくり首を振る。






 同じスピードで……俺の中のドス黒いもんが頭をもたげた。




 ーーーーー 誰にも渡さねぇ。
 ーーーーー こいつの全部を奪って。
 ーーーーー 俺無しじゃいられねぇ体にしてやる。





「じゃあまずは……ガキのキスからだな」


 顔を寄せ、囁く。「目を閉じて。息は鼻からしろ」


 始めは、羽みたいなキス。触れるだけの。
 その後すぐ、ただ合わせるだけのキス。角度を変えて、2回、3回。




 好きな女とするキスは……驚くほど気持ちが良くて……この柔らかくて吸い付くような感触に囚われてしまいそうで。
 怖くなった俺は、急いで先に進んだ。





「次は……大人のキスだ」
 目の前の顔がビビってたが、どうすることも出来ない。
「……口、開けろ」






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Comments 2

NUN
NUN
Re: タイトルなし

s****様

コメントありがとうございます!
いつもながらに秀逸な……

スイマセン。
想像して爆笑しちまいました。
たけのこの里だと尖りすぎですもんね♡

ちなみに私はきのこの山好きです♡(何の話じゃい!)

  • 2020/10/19 (Mon) 20:37
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  • 2020/10/17 (Sat) 22:23
  • REPLY